抽象日記
それはとってもかわいらしかった。
山の小鳥の鳴き声みたい。
それはとっても穏やかだった。
悠々とした象みたい。
それはとってもあたたかかった。
3月のひなたみたい。
それはとってもやわらかかった。
羽二重餅みたい。
でもそれはいくつもの深みをもっていた。底の知れない川のよう。わたしが足を踏み入れていたら、とうに溺れているだろう。
だからこそそれは強かった。
合金じゃなくて玉鋼みたい。
だからこそそれはやさしかった。
おさがりのワンピースみたい。
眩しく光るところもあった。翳りをおびたところもあった。汗のにじんだところもあった。反射しているところもあった。
楽しみなことがいくつも増えた。
夏休みのこどもみたい。