鼻血を出したい
大丈夫です、わたしはまともですよ
小さい頃、鼻血が出るってそれはもう鮮烈な体験だった
みるみるうちに真っ赤に染まりゆく手、顔、下手したら服
血、あかーーーい!!!
量、すごーーーい!!!
呼吸、しづらーーーい!!!
おかあさーーーーん!!!!
と、それはもう上は洪水下は大火事みたいな騒ぎなわけですよ
当時の自分からしてみれば、下手なパニックホラー映画なんかよりよっぽど怖かったと思います、なんせ自分の鼻から大量の血が溢れているのだから
鼻血、最近出したことありますか?
ハイローとかごくせんみたいな世界線にお住まいの方は別ですよ
前回鼻血を出してからはや幾星霜、という方も多いのではないでしょうか
中学の頃、大好きな国語の先生がいました
とても面白い人だった
彼はなかなかに厭世的な人で、人生もうポケモンとパチンコしか楽しみがないというようなことを言っていました
そんな彼、しゃっくりが好きだというのです
なんで?苦しいし嫌じゃん!当時のわたしは思った
そこで理由を聞くと、
「そこそこの年月を生きてきて、もう大体のことを経験してしまった。経験していないこともそりゃあるが、おおかた想像がついてしまう。そんな中、しゃっくりだけは別だ。しゃっくりは、自分の体を自分で制御できない瞬間をもたらしてくれる。何回経験してもそれは変わらない。それが面白いから好きだ」
あるいは、彼の髪型は時々、
どうしたんですか…?(笑)
と言いたくなるような仕上がりになっていた
理由を聞くと、
「刺激がほしいから、床屋ではいつも最初に『おまかせで』と言い、切られ終わるまでずっと目を閉じたままにしている。終わって目を開くと、想像だにしていない髪型になった自分が鏡にうつっていてウケるときがある。それを求めている。外見はどうでもいい、想定外が欲しい」
当時はただ、終わってんな~この人と思って面白がっていたのですが、幸か不幸か彼の気持ちが少し分かるようになってきてしまいました
自分の意思が置き去りにされること、自分の想像を逸脱するもの、新鮮な驚き
鼻血、久々に出たらウケるだろうな~と思ったのはそういうことなのです
でも、私たちがほんとうに求めているのは鼻血でもしゃっくりでも、理容師のセンスを疑うような奇抜な髪型でもないのでしょう
みんなで出せるといいですね
目の覚めるように鮮やかな、そう、
心の鼻血を……………。