三歩進んで四歩下がる

 

茶店でバイトしてて、廃棄の食べ物をもらって帰ることがあるんですよ。昨日はパンをいくつかと、自家製のゼリーを貰ったんですね。パンはパンでまとめてビニール袋に入れたんですけど、そこにゼリーをぶっこむのはさすがに心もとないと。だから、袋を片手に、ゼリーをもう片手に、肩掛けかばんを肩に提げて、帰る準備をしたんです。で、先に車のキー出しとくか~と思い立って、一旦ゼリーを置きますと。その空いた片手でキーを出して、持ちました。はいこの時点でわたしの頭からゼリーのことが完全に消えました。

 

店から出ました。昨日の締め作業はわたしを含む3人で行い(わたし以外の二人をAさんとBさんとしましょう)、その日鍵を持ってたAさんに鍵をしめてもらいました。車までみんなで歩きます。途中で気づきました。あれ、ゼリーがないぞ。Aさんすいません。中にゼリーを忘れました。お手数ですがもう一度鍵開けてください。

一旦はゼリーのことが頭からさっぱり無くなっているので(ゼリーなだけに)、どこにゼリーを置いたのかもさっぱり思い出せません。どこだどこだ。ゼリーはどこだ。二人にも頼んでゼリーを探してもらいます。結局、棚の上にホイっと置いてあったのを彼らが見つけてくれました。ゼリーがあったぞ、ああよかった。もう忘れない。片手にゼリー、片手にビニ袋、キーも一緒に持ったからもう大丈夫。

 

再び店から出ます。彼らとは仕事のあとしばしば、そのまま長々と立ち話するのですが、昨日は眠たかったので一足お先に帰ることにしました。お疲れ様です。歌を歌いながら車を走らせます。家につきました。車から出るときにはパンはもちろん、ドリンクホルダーに入れていたゼリーを忘れずに持ちますよ。同じ轍は踏みません。家まで歩きます。わあ今日は月が綺麗だなあ。駐車場にいるねこちゃん、おやすみ。そんなことを思いながら家に入ります。手洗いとうがいをしよう。でも先に、ゼリーを冷蔵庫に入れるか。冷蔵庫を開けます。ここで気づきました。

 

 

かばんは………?

 

 

ゼリーにばかり気をとられて車に忘れてきたのか!急いで車に戻り、助手席の座面を見るも、かばんはありません。あっ焦ってたから、そこらにかばんを適当に置いたのを忘れただけかも。急いで家に戻ります。やっぱりかばんはありません。いや、さっき車を見に行ったけど、外から助手席の座面を覗いただけだったから、実はやっぱり車の中にあるのかも。ブレーキふんだ勢いで、助手席の足下に落ちたのかも。急いで車に戻り、今度はドアを開けライトをつけ、徹底的に探します。ありません。薄々思っていたことを認めざるをえない時がきました…多分、店だ。運転席に座ります。あの二人がまだ立ち話してくれていることを祈りつつ(携帯もかばんの中なので、連絡いれて確認とることもできません)、エンジンをかけます。あっ玄関の鍵かけとらんやんけ、クッソ~。エンジンをとめ、再び急いで家に戻ります。さあ鍵も締めたぞ。急いで車に戻ります。何度目の正直か、いよいよ店に向かいます。

 

店の駐車場に着くと、Aさんはもうそこにはおらず、Bさんがひとり車のなかで携帯をいじっていました。わたしは車から飛び降りると、運転席のBさんに走りより、合掌しました。Bさんは驚いて窓を開けます。すみません。すみません。Bさん、店の鍵っていま持ってましたか?

聞けば、ちょうどAさんと話を終え、さあ帰ろうかというところだったようです。間一髪。さらにBさんは家に鍵を置いてきていたのですが、事情を話すと、なんと家まで取りに行ってくれるというのです。聖人君子か。ヒエエ~ありがとうございます~申し訳ねぇ~!!とヘコヘコヘコヘコBさんを送り出し、ソワソワソワソワ自分の車内で待機します。

 

Bさんは迅速に鍵を回収して戻ってきてくれました。ありがとうございます。ありがとうございます。でもすみませんが、ここまでしてもらっておいて、やっぱりここには無いかもしれません。そう予防線を張りました。ほんとうにきれいさっぱり記憶から消えているので、全く自信がないのです。店に入ります。わたしは探し回ります。無い!ほんとに無いじゃん!じゃあどこにあるの!ウワー!

わたしがひとりアワアワしていると、あとから入ってきたBさんがいとも簡単にかばんを見つけました。見つけましたというか、入れば普通に目にはいる段ボールの上に置いてありました。わたしは膝から崩れ落ち、二人で爆笑しました。絶句です。視野の広さがチーターじゃん。いくらテンパってるとはいえ。そもそも家について車を降りるのに、かばんを持ってないことに一切違和感をおぼえず、ゼリーとパンだけ握りしめ、ねこちゃんウフフとノコノコ歩いていたことにドン引きです。このうっかり八兵衛!ド腐れ海馬!わたしは再びBさんに全力で謝罪し、それぞれ帰路につきました。

 

 

ここまでひどいのはなかなかありませんが、もっと軽度なものであれば、似たようなことは日常茶飯事です。なにか新しいことに気をとられると、投げたカーリングの石が元あった石を弾きとばすみたいに、スコーンと綺麗に入れ替わってしまうんです。

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クソバカ記憶カーリングの図

こういう記憶力が深刻に欠落しています。一方、昔見たニュースの映像とか、いつか小耳にはさんだしょうもない雑学とか、そういうことはめちゃくちゃ覚えています。いらね~。最終的にうっかり家を燃やしそうでこわいです。人間向いてないなあとよく思います。犬かロバになりたい。